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2005年度経営品質事例研究会

淘汰が進む厳しい環境に対応

 秋田県経営品質協議会の第1回事例研究会が1月19日、午後2時半から秋田市大町の「さきがけ大町センター」で開かれた。今回の講師は2003年度千葉県経営品質賞奨励賞を受賞した千葉県酒類販売株式会社の常務取締役・飯沼喜規氏と推進担当課長の長原雅樹氏。演題は「経営品質向上の取り組み」。研究会には会員企業はじめ酒販卸業界、自治体職員など35人が参加した。

第1回事例研究会(さきがけ大町センター)
 酒類流通は小売免許の規制緩和に端を発した流通構造の激変により、大手卸への集約と中小酒類卸の淘汰が進んでいる。とりわけ地場酒類卸は大手への営業譲渡あるいは廃業の二者択一を迫られている。こうした環境の中、同社は経営理念の<なくてはならない企業>を実現していくため、トップ自らが多彩な方法で社会的責任の遂行、規制緩和以降の販売先が大きく変化する環境変化に対する対応を進めている。その結果として「経営幹部のリーダーシップ」、「経営における社会的責任」、「価値創造のプロセス」そして、「情報マネジメント」の面で優れた仕組みが認められ経営品質賞奨励賞を受賞した。

「なくてはならない企業」を目指す。結果重視からプロセス評価へ

《講演要旨は次のとおり》
 まず酒類販売の環境認識だが、酒類市場は年々減少、また法改正と規制緩和などにより、消費者の買い場が量販店やスーパーへ変化、企業統合などによる流通業界の再編も激化した。一方では社会的責任も高まり、業界としては未成年飲酒の防止運動、自販機の撤去、管理士の設置などへの取り組みが求められている。

 さて、経営品質との出会いだが、きっかけは、このままでは将来がないとの危機感から。コンサルタント会社への経営診断を経て、第4次中期経営計画の策定委員会が発足。その過程の中で、会社の強み・弱み、企業体質が露呈したが、この問題をクリアするために経営品質の導入が必要と認識した。その後、運動を推進する経営企画室の新設など組織改編を図り、02年にセルフアセッサーを養成、翌年には千葉県経営品質賞に挑戦した。

講演する千葉酒類販売の飯沼常務
 経営幹部のリーダーシップを発揮するためには、全役員と管理職が事例研究に出席。またJQAの講習会にも参加。経営理念である豊かさの創造に向けては、「なくてはならない企業」を目指すこととし、本音のコミュニケーションを図るため、社長と社員の対話集会を重ね、会議の質問に対してはトップが自ら即答した。各種要望についてはグループウェア使い回答するなど、一方的な情報でなく価値の共有を図った。

 社会的責任の遂行については、得意先・顧客の繁栄を第1に考える企業を目指すこととし、千葉県の特産物を利用した「千産千消」(地産地消の意)運動に呼応し、焼酎の開発、そのPR活動に貢献。また、堂本知事が提唱する「ちば環境再生基金」運動にも協力するなど、社員のモチベーションを高めた。

 戦略の策定と展開については、結果重視からプロセス評価へシフト、現場への叱咤激励は止めた。また、組織をまたがるチーム編成により、社員が経営参加する仕組みづくり創った。これが運動推進の下地になったと思うし、他から評価された点だと思う。個人と組織の能力向上については、新人事制度の導入、資格取得の奨励、表彰制度、さらには社員の満足度調査も行った。さらに、社内ランの掲示板を使い得意先や顧客の意見を開示。この情報は登録してCS会議(物流の責任者)で対応した。「クレームは顧客の期待の裏返し」との考え方が浸透して行った。

365日注文受付センター設置。情報マネジメントも

 顧客価値創造のプロセスについては、日曜日以外は毎日配送するシステムを導入した。顧客からのニーズに沿ったもので、365日注文受付センターの設置はじめ、無線LANを活用した在庫管理、配車管理システムも構築。

 情報マネジメントは重要なテーマ。市場変化が激しい業界にあっては、情報システム構築は必須条件。顧客情報、売り上げ、在庫状況などDBの公開も実施、評価されている。もちろん個人情報の保護法、セキュリティー管理に万全を尽くしている。

 重ねて強調するが、そもそもは経営品質賞の真髄に共感し取り組んだもので、賞の獲得が目的ではなかった。最初はセルフアセッサーなど用語、難しい言葉は使わなかった。じっくり取り組み、じわじわと効力を発揮する漢方薬的な働きだと思う。当社の社長が「鎮守の森のような企業を目指す。大木だけでは成立しない」と言うように、今は企業の大きさを競う時代ではない。強みを生かしたオリジナリティーのある会社、顧客に愛される会社にすることが求められている。

【千葉県酒類販売(株)の概要】
設立:1953年(昭和28年)12月24日
取引高:336億6千万円(平成16年度実績)
従業員数:172人(正社員、17年4月現在)
事業内容:県内外の3千店のサポート役としての全酒類、輸入洋酒、清涼飲料水、食品の卸売、外国航路船舶・航空機用酒類免税店品及び輸出用免税店の卸売
事業所:県下1支社・7支店・2物流センター


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